膿瘍

<猫同士が喧嘩すると何がおきるか>

どら猫、それとも虎?

あなたの猫ちゃんは友好的で素直に見えるかもしれないが、その仮面の下には好戦的な猫が潜んでいるのである。

猫の喧嘩と、その結果である外傷は、ペットが動物病院に来て、獣医師の治療を受ける主な理由である。

 

猫が犬を攻撃する事もあるが、ほとんどの場合、他の猫を攻撃する。

二匹の成猫が初めて出会ったときには必ずといっていいほど、争いが起こる。

それ以外でも、縄張りや、優位性の問題をめぐって、あるいは飼い主の注意をひこうとして、喧嘩をすることもある。

猫の歯は細くて鋭いので、咬傷による怪我は刺し傷のような形になることが多く、犬同士の喧嘩のように、

下部組織が広範囲にわたって損傷を受けることはない。

本来口の中には多くの細菌が存在するので、たいがいの咬傷は汚染されている。

事実、ねこによる咬傷は、犬の場合よりも感染を起こしやすい。それに猫の歯は細いので、小さな傷跡は、

しばしば見逃す事がある。

治療をしなければ、こうした小さな傷がやがて大きくて痛みを伴う膿瘍へと進行する。

咬傷や膿瘍を起こすだけでなく、猫の喧嘩の結果として、致死的なウィルスが感染することがある。

猫の免疫不全ウィルスや、猫白血病ウィルス、猫伝染性腹膜炎ウィルス等が、猫から猫へ感染する。

狂犬病もまた、感染猫から、他の動物へ感染する。

 

<注意する事>

目に見える傷もあるが、たいがいの傷は見逃しやすい。あなたの猫の様子に注意を払ってください。

次に述べるような徴候に気づいたら、かかりつけの獣医師に連絡してください。

・寝てばかりいる。

・出血

・穴のあいたような傷

・皮膚に出来た腫れや瘤

・跛行

 

<診断>

猫の喧嘩による外傷は身体検査所見によって診断される。

典型的な例では、穴の開いた傷や小さな裂傷が存在し、場合によっては筋肉の外傷や糜爛もみられる。

あなたの獣医師は、猫が足に強い痛みを訴えるようなときにはレントゲン撮影を勧めるかもしれない。

猫の歯は猫の骨を骨折させるほど強くないので、猫の喧嘩で骨折が起きる事はまれである。

しかしながら、喧嘩の舞台が高い木の上や、屋根の上のこともあるので、あなたの猫ちゃんが転落によって、

怪我をすることもある。

 

猫の外傷を治療する上での目標は、傷をきれいにし、壊死組織を取り除き、感染に対する治療をする事により、

それ以上の細菌感染を防ぐ事である。

傷に対する処置が12時間以内に行われたなら、傷が複雑にならずに済む可能性がある。

 

<怪我の手当て>

猫同士のけんかによる外傷は通常かなり痛いものなので、獣医師は痛み止めを与える事もあるだろう。

事実あなたの猫ちゃんは治療中にすごく痛がるので、鎮静処置が必要でしょう。

 

まず獣医師は傷の周りの毛をすべて刈り取ってから、ポピドンヨードかクロルヘキシジンできれいにする

だろう。この時点で、獣医師はすべての壊死組織を取り除くだろう。もし皮膚の下に明らかなダメージがあり、

液体の貯留が予想されるときには、そこにドレーンを入れておく処置をとるだろう。

もっともこれは、猫同士の喧嘩で必要となることは少ない。

この時点で縫合が必要となる事もあるが、たいがい、排液を促すために開けたままにして、自然にふさがるのを

待つ事が多い。

 

<抗生剤療法>

猫による咬傷は他の場合よりも、感染を起こす確率が高いので、獣医師はあなたのペットに抗生剤を

処方するだろう。

その際、感染を起こしているバクテリアの種類を決定し、最適な抗生剤の種類を選択するために、細菌の培養や

感受性テストが行われる。

しかしながら、この検査はふつう、最初に使った抗生物質に対する反応が悪いときにだけ、行われる事が多い。

 

ほとんどの外傷例では、パスツレラ ムルトシダ菌に汚染されているので、アモキシシリン、

クラブリン酸アモキシリン、セファレキシン、セファドリル、エンロフロキサシン等の抗生物質が選択される。

 

<家庭でできる看護>

最初にすることは、過酸化水素水やポピドンヨード、あるいはクロルヘキシジンで傷をきれいにすることで、

これによって感染を減らす事が出来る。

しかしながら、その際には最大の注意を払ってください。なぜなら、咬傷は大変痛いものなので、あなたのペットは

恐怖と痛みから、あなたを噛むかも知れないからである。もしかまれそうなら、治療をやめてください。

 

もし家庭で処置をしても、すべての外傷はやはり、獣医師にみせて治療してもらってください。

膿瘍というのは、皮膚に小さな穴が開いているだけの傷のように見えても起こることがある。

 

あなたのペットが治るまで、家から出さないようにしてください。暖かい季節であれば、

外傷をちゃんと手入れしないと、皮膚の外傷にハエが寄ってきて、ウジがわくことがある。