異物により、胃拡張胃捻転症候群を起こしたワンちゃん

　５歳の柴の女の子が、吐けそうで、吐かない仕草を繰り返すとのことより来院されました。

当院に来院される前に、他院で点滴処置をしていたとのことでした。

ワンちゃんは来院された時には、何度もえづいて、ややぐったりしておりました。

直ちにレントゲンを撮影した所、下のように重度の胃拡張を認めました。 

　重度の胃拡張により循環障害が生じ、閉塞性ショックを起こしていると考え、すぐさま、全身麻酔下にて胃内容物を抜去し、胃の減圧を行いました。

処置を終え経過を見ておりましたが、翌日の午後から元気・食欲がなく、初診時ほどではないですが再び胃が少し拡張しておりました。(下の写真です) 

　胃捻転でないことは確認しておりましたので胃腸に何らかの閉塞物がある可能性が高いと判断し、超音波検査にて以下のような球状の異物による閉塞所見を認めました。

飼い主様に再度確認したところ、スーパーボールで遊んでいたとの裏付けもとれたため、試験開腹を行いました。

下のようなスーパーボールを摘出いたしました。 

　この飼い主様の場合はワンちゃんの状態をきちんと把握されていらっしゃる方でしたが、異物の誤飲は確認されておりませんでした。

　
　実際に異物を摘出する例では、異物の誤飲に心当たりのある飼い主様はまずいらっしゃいません。

なので、的確に検査し、見つけ出すことが非常に大切です。

今回のワンちゃんのように、異物が原因で、胃液が大量にたまって胃拡張を起こすほどまでに悪化する例は珍しいのです。

胃拡張だけでも命に関わる状態でしたので、

異物を飲み込んでたから、胃拡張まで引き起こしていたとは、、、。

動物の症状は油断できないものだと改めて実感いたしました。